室員（1年生）から、後期で学修する民法・憲法・刑法の勉強法や使用教材について質問を受けましたので、空の塔で考えていることも含めて、記事としてまとめてみました。
以前、↓のとおり民法編・刑法編については投稿しました。
【公開記事】1年生後期向き（上三法の使用教材・勉強法）民法編
【公開記事】1年生後期向き（上三法の使用教材・勉強法）刑法編
本日は、（相当遅くなってしまったのですが）憲法編です。時期が遅くなってしまったので、2年生以降も見据えた説明もしております。なお、本記事の作成に当たっては、空の塔講師の森崇久さんにもアドバイスを頂いております。
また、この記事は空の塔の活動の概要を知ってもらうべく、一般公開設定としています（ただし、個別の記事については空の塔の室員でなければ、閲覧できませんので、ご容赦ください！）。
【質問】
1年生の後期になったので、前期に学んだ民法に加えて、憲法や刑法の勉強も始まりました。学部中の予備試験合格や上位ロースクールへの合格のために、上三法については、後期中に定着させたいと考えています。
そこで、後期における、これら三法の勉強の進め方を教えてください。また、オススメの基本書、短答・論文の問題集について教えてください。
【回答】
1．使用教材
使用教材（基本書・問題集等）については、1年生後期に限りませんが、以下の記事でまとめられています（室員であれば、いずれも閲覧可能です）。
【講師の皆さんに聞いてみる】Vol.2 民法の使用教材や勉強のポイント
【講師の皆さんに聞いてみる】Vol.3 刑法の使用教材や勉強のポイント
【講師の皆さんに聞いてみる】Vol.4 憲法の使用教材や勉強のポイント
【講師の皆さんに聞いてみる】Vol.5 民訴法の使用教材や勉強のポイント
【講師の皆さんに聞いてみる】Vol.6 刑訴法の使用教材や勉強のポイント
【講師の皆さんに聞いてみる】Vol.7 商法の使用教材や勉強のポイント
【講師の皆さんに聞いてみる】Vol.8 行政法の使用教材や勉強のポイント
短答の問題集については、予備校が出版している過去問集のいずれかを利用すれば良いと思います。
2．1年生後期～ 憲法
（1）基礎知識を入れたら、問題集一冊をマスターする。
（以下は刑法編と同じことを書いていますので、刑法編を読んだ方は、（1）は読み飛ばしてもらって結構です）
憲法については、ほとんど全員が1年生後期から勉強を開始すると思いますので、知識ゼロであることを前提に説明をします。
まず、知識ゼロの初学者は、以下のような手順で勉強するのが良いと思います（これは概ね、どの法律にも妥当することであると考えています。）。
- 基礎講座や入門ゼミ、簡単な入門書やレジュメで基礎知識を抑える。
- 問題集の問題を解く。
- 問題集の解説や参考答案を読んで理解する。
- 問題集の解説等を読んで理解できないところは、1.の入門書やレジュメ、又は基本書・判例集を読んで理解する。
- 2～4を繰り返す。
では、なぜ以上の手順で勉強をすべきなのかについて、以下で簡単に説明します。
まず、前提として、司法試験や予備試験は「試験」ですから、問題演習を中心に勉強するのがセオリーです。
しかし、どの法律にも共通していえることですが、知識ゼロの状態でいきなり法律問題の演習をするのはさすがに厳しいです。おそらく解説を読んでもポイントをすぐに抑えることができないと思います。したがって、問題集の解説を読んで分かる程度で良いので（逆にそれ以上インプットに偏るのは良くないです）、まずはその法律科目の基礎知識を抑えることから始めるべきだと思います。
その方法としては、最初は、基礎講座や入門ゼミを受講して基礎知識を抑えることをオススメします。もちろん、自分で勉強できる方は、簡単な入門書やレジュメを読んで基礎知識を抑える方法でも良いと思います。ただし、個人的な感覚としては、特に1年生のうちは法律の勘所を十分に抑えられていないので、人から教わった方が、早く理解できるような気がします。
そして、基礎知識を抑えたら、早速問題演習に入るのが良いと思います。学んだこと（＝インプットした知識）を活かす（アウトプットする）ことにより、一つ一つの論点の理解も深まりますし、どういった点が問題で問われるのかが分かってくると思いますので、どこが重要かの感覚も身についてきます。また、短期集中型でインプットとアウトプットをすることで記憶をより効率的に定着化させることもできると思います。
ただ、基礎講座や入門ゼミで、基礎知識を抑えたからといって、直ちに答案が書けるレベルには普通ならないはずですから、最初の1周目は問題を見て分からなければ（この点が問題ではないかという程度の見立てはして）、すぐに解説や参考答案を読んでしまう方が効率的であると思います。
そのため、まずは、問題を解いてみて、難しければすぐに解説や参考答案を読んでみる、それでも理解できないところがあれば、入門書やゼミのレジュメを確認してみるという順序で勉強するのが良いでしょう。また、初学者のうちは、入門書やゼミのレジュメを読んでも理解できなければ基本書や判例集を読む順序が良いと思います。あるいは、そこまで悩んだ話というのは先輩も過去に同じ悩みを持っていた可能性が高いので、近い先輩に質問する方が早いかもしれません。
そして、問題集を1周回すだけでは、単に解説や参考答案を読んで終わってしまった部分も多いかと思いますので、もう1周あるいは、問題によっては、もう2・3周こなすことで、一冊の問題集をマスターしてください。
嘘だと思うかもしれませんが、問題集を一冊マスターすれば、この時点で司法試験や予備試験のために必要な知識は十分身についている状態になっているはずです（あとは、それを本番で確実に発揮できる「実力」を身につけるために、色々な問題集を解いたり、判例集を読んだりすることになります。）。
（2）空の塔推奨 使用教材と勉強方針
まずは、①空の塔で実際に行われた「憲法導入ゼミ」の録画を視聴して、基礎知識を入れた後、②問題集として「読み解く合格思考 憲法 改訂版」（玄唯真著・大野純補訂 辰巳法律研究所）を使って問題演習をしてみてください。また、③この問題集を利用するにあたっては、筆者と補訂者が空の塔内で実施してくださった「合格思考憲法を使った憲法勉強方法確立ウェビナー」「合格思考憲法ゼミ」の録画を視聴すると、さらに理解が深まると思います。
なお、基礎知識の習得として、法職多摩研究室が主催する基礎講座や基礎ゼミ、予備校の入門講座を受講したり、簡単な入門書を自分で読むことでも良いと思います。しかし、各講座は今のタイミングでやっているか分かりませんし、いきなり入門書を読んで理解するのも大変だと思いますので、今から取り組む方は「憲法導入ゼミ」で基礎知識を入れた後、「読み解く合格思考 憲法 改訂版」を用意して、「合格思考憲法を使った憲法勉強方法確立ウェビナー」→「合格思考憲法ゼミ」の順で視聴するのが一番早くて（費用的にも）効率的であると思います（もちろん、どれか一つではなく併用することで理解も深まると思います。）。
また、入門は終わっており、基礎知識を習得している方は、「憲法導入ゼミ」や入門講座等は利用しない、又は部分的に視聴するにとどめて（憲法導入ゼミの三段階審査などの総論部分は復習のために視聴してもよいと思います）、問題演習（「特別講義 合格思考憲法を使った憲法勉強方法確立ウェビナー」「合格思考憲法ゼミ」）を中心に行うことで良いと思います。
なお、炎の塔などで憲法論文入門のオーダーゼミを受けるということでも良いと思います。自習の場合、Newえんしゅう本（辰巳法律研究所）を利用される方もいると聞いています（合格思考憲法が難しいという場合には、Newえんしゅう本をとりあえず見てみることもアリだと聞いています。）。
【特別講座】執筆者直伝！合格思考憲法を使った憲法勉強方法確立ウェビナー
※ゼミの内容について不明点があれば、遠慮なく空の塔内で質問をしてください。
また、合格思考憲法を通じて一通り問題演習を行ったら次は、ロースクールや予備試験の過去問演習をすると良いと思います。やっぱり過去問を網羅的に解くことは、単純に多くの論点に振れる機会になりますし、どこが試験で問われるのかを知る上でも役立ちます。他の受験者が解いた問題を抑えて差を付けられないという意味でも重要であると思います。
加えて、「憲法判例百選読み込むゼミ」が現在（2021年3月28日時点）実施されていますので、是非参加してみてください。基礎知識のインプットをして多少問題演習をこなしていれば、百選ゼミに十分対応できるレベルになっていると思います。特にこのゼミでは、講師の森崇久さん作成の「憲法判例から答案を考えるレジュメ」が使用されており、下記のリンク先にも保存されています（室員限定公開・180頁の大作です）。
憲法は百選判例を理解することが非常に重要であると思いますので、このゼミを通じて判例の理解を深めることに加えて、優秀な講師陣から、百選の読み方・答案への表し方のコツを吸収していただきたいと考えています。
最後に、空の塔では、定期的に答案添削企画も実施していますので、是非利用してください。試験で評価されるのは、受験生の勉強時間、問題演習の数、頭の中の知識量でもなく、「答案」が唯一であり全てです。日頃の問題演習では答案作成までせずに答案構成で済ませている方も多いと思いますが、特にそういった方々はこの機会に答案を作成して、答案作成に慣れてください。また、普段答案作成している方も、優秀な講師に自分の答案を見てもらい客観的に評価してもらえる機会は貴重なので是非利用してください。
3．小括
以上が憲法編でした。
記事の内容について、ご質問・ご不明点等ございましたら、遠慮なく高野までご連絡ください。
